北海道山の旅:2024年6月20日~25日,参加者 8 名 |
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6月20日: 韓国の会員さんは関西国際空港,岐阜のご夫妻は中部国際空港,それから京都組は伊丹空港から別々の飛行機に搭乗し14時前に新千歳空港で合流.早速8人乗りのレンタカーを借り日高の様似町へ向かう.
道央自動車道から日高自動車道に入り国道235号線の海岸沿いを太平洋の美しい北の海を見ながら快適なドライブを楽しみました.競走馬のふるさとの日高を過ぎ,JR日高線の廃線跡や駅舎跡を見ながらなんか寂しさも感じられました.17時過ぎに様似の町に到着.海岸沿いからアポイ岳が美しく望めました.
事前に調べておいた飲食店で新鮮な刺身定食をいただき全員満足で外に出ると様似の町越に明日登るアポイ岳が迫って望めました.近くのコビンビニで明日の朝食用の食材を購入して今晩泊まるアポイ山荘へ向かう.19時前に到着して早速温泉に浸かり露天風呂からは太平洋が美しく望め,明日は快晴と期待する.入浴後部屋で疲れを取るために小宴を開催しましたが明日の事を考えて22時には就寝しました.
6月21日: さて,北海道の旅の成功を祈念した昨日の第1回宴会の疲れもなく,5:30には起床し,朝食を各自でいただく.
6:30にアポイ山荘を出発,登山口駐車場まで,車で2~3分.曇り空でなんとなく不安です.今日登るアポイ岳は2015年にユネスコ世界ジオパークに認定されている花の名山です.早朝にもかかわらず,登山口には10台近い車が止まっていました.
登山の前に少しアポイ岳について説明しておきます.
アポイというのはアイヌ語でアペ・オ・イ(火のあるところ)が語源で,この山の山頂で天を焦がすばかりの大きな火を燃やし,鹿を授ける様に神に祈ったという伝説から来ています.アポイ岳は日高山脈の最南端に位置していて,約1,300万年前のプレート同士の激突により地下10kmにあったマントルが露出してできた山と言われています.このマントルが冷えてできた「橄欖(かんらん)岩:学名はオリビンでオリーブに似ている色合い」は超塩基性で植物には厳しい土壌で,さらに夏も暑くはならず,冬は雪が少なく温度が下がりやすい条件です.このような理由で低標高の350メートル付近から高山植物がみられ,80種以上確認されているそうです.そのうち30種以上固有種があるそうです.また針葉樹林帯の上の高度でハイマツ帯となり,その上にダケカンバ帯と通常と逆転しているそうです.強風の影響とも言われていますが,理由はわかっていないそうです.
では出発です.アポイ岳の登山口は海からは約1km内陸で,標高は80mほどです.アポイ岳は810mの標高なので,730m登ることになります.駐車場から登山口までの道路沿いに地元,様似(さまに)小学校の子供達のアポイ岳を守る標語(例えば,たもとうよ うつくしいアポイを いつまでも)が書かれた木の看板が並んでいます.その川側はキャンプ場になっています.
5分ほどで登山口です.いきなり「6月6日 アポイ山麓公園にヒグマ出没」との張り紙があります.少しゆくと「6月13日 ヒグマが出ました」との張り紙.極真空手の大山倍達の様なメンバーがおらずやや不安.クマザサの間を歩いて行きます.大きなダケカンバが根こそぎ倒れていてその根元の土からエゾマツ?が天に向かってまっすぐ生えています.右手は王子製紙社有林だそうです.登山道の両側にはロープが張られ,アポイ岳に生息するヒダカソウを保護するために立ち入れないようになっています.
歩きよい緩やかな登りをゆっくり進んでいきます.30分ほどで,一回目の休憩です.結構暑くて,軽装となり,水も補給です.この辺りからマントルが冷えてできたかんらん岩がゴロゴロしてきます.めちゃくちゃ重い石です.漬物石にしたら,白菜などはぺちゃんこになりそうです.水場でもある第一休憩所を通過し,どんどん登っていきます.と言ってもこの辺りは傾斜が少なく,歩きよい道です.大きなかんらん岩が目立ってきました.黒や緑,青などが目立つきれいな岩ですが,持って帰るには重すぎます. どんどんゆくと「アポイのビーナス」と呼ばれる色っぽい木がありました.ちょっと表現しにくいのですが少しくねっと,身をよじらせたような木です.この辺りから少し道が急になります.アポイ岳自然調査員?の方と一緒になり,色々と教えてもらいながら歩くのですが,写真を撮ったりしておられても我々よりペースが速いのです.
出発して,1時間20分ほどで,5合目に到着しました.ここには避難小屋があります.この5合目からは太平洋が見え,これから登るアポイ岳の頂上も見えます.
ここで,もう一度休憩し,頂上めざし出発です.
もう少し急登が続きます.このあたりからもうハイマツが群生しています.400m弱の標高です.北海道でも通常は1,000m以上で見られる層です.しばらく行くと【毒へび】という看板があり,その看板の下になんと太く長いマムシがとぐろを巻いていました.作り物ではなく,時々頭を動かしています.帰りにはいませんでした.ということはその辺りにいるのか?ひとしきり京都の会員さんが話題となって,急登を楽しく登りました.
さあ,頂上へ続く馬の背です.結構細い道を歩きます.昨日車で通った様似の街が海からの霧に飲まれていくのが見えます.最初は入り江部分に霧が入り込み,次第に陸へと上がってきます.それがゆっくりと進んできて,牧場も霧に飲まれ始めています.海に目をやるたびにこの幻想的な場面が刻々と変わっていくのが見られました.
7合目で休憩です.さっき休んだ5合目の小屋を遠くに見えます.ここからは,アポイ岳のいろんな花を見ながら,正面に見える頂上を目指します.トラバース分岐点に着きました.リーダーが15年前に来たときにはきれいだったお花畑は今や旧幌満お花畑となり,ハイマツに覆われ,花は壊滅状態とのことです.その代わりアポイ岳から隣の吉田山の途中がきれいだということで,旧お花畑はパスし,直接アポイ岳山頂に向かいます.
8合目,9合目と少しずつ水分補給休憩を取り登っていきます.きれいな景色を見ながら.
登山開始から2時間50分,9:50にアポイ山頂に着きました.810.6mです.少し年季のはいった小さな祠があります.「天之御中主神」が祭られているそうです.少し栄養補給をして,吉田山方面に向かいます.大きな岩が目立ち,その脇を山道が走っています.大きな互層状かんらん岩を見ながら吉田山方面に向かいますが,目指す高山植物の花はほとんど見られず,途中で撤退です.ここから見た様似の街は完全に霧に飲まれています.もう一度山頂に戻り,11時に下山開始です.約2時間かけて,登ってきた道を下り,熊には会えませんでしたが,登山口に戻ってきました. 下山途中でのエピソードを一つ.筆者のかかとが岩の間にはまりこけそうになり,同行者にぶつかって止まりました.「いや助かった.ありがとうさん」.その30分後「毒へび」看板の付近で,その同行者がよろけ,ぶつかられた他の参加者が崖下に転倒か,と焦ったが,さすがの身のこなし,一回転で無事起き上がり,毒蛇にもかまれず,平然と復帰.筆者が同行者を押したことが原因で他の参加者が倒れたということで,無事決着.しかし,よかった.
下山後,泊めて頂いたアポイ山荘で入浴させていただき,さっぱりとした7人は空腹で,襟裳岬へと向かいました.
襟裳岬は濃い霧で,昔歌われたように何もない初夏かという気がします.先ず,遅いお昼ご飯です.せっかく北海道に来たので,TVにも紹介されたというラーメンを食べました.岬の土産物屋なのにこれが結構美味しかったのです.食堂内では島倉千代子さんと森進一さんの歌う襟裳岬が交互に流れていました.外には両方の歌詞が書かれた二本の石碑が建っていました.「風極の地」という看板もありましたが,風が強く,霧も濃く,岬の最先端に行くことは断念しました. 15時半に今日から宿泊させて頂く,北海道の会員さん(今回の例会の「ホストさん」)のお宅に向かって出発です.約120kmの旅です.
途中,ロケットの街,大樹町で晩ご飯を調達,ひたすら走ります.19時頃にホストさんのお宅に到着.ホストさんとの再会も喜ぶのですが,やはり早速宴会です.飲むわ,飲むわ,の大宴会.明日が心配と思われる半数を残して,半数は就寝です. 6月22日: 剣山(つるぎやま)にホストさんを含め8名で登山.
アイヌ名はエエンチエンヌプリで尖った山の意.頂上に剣を祭った信仰の山で山名もそれに由来する.登山口には剣山神社があり,無人のヒュッテもある.上部では固定ロープやハシゴも出てきて面白い登りになると言う事である.
剣山1,205mは北海道上川郡清水町にあり,北海道百名山に選ばれている.日高山脈の主脈を外れ,十勝平野に張り出した尾根の末端にあり,芽室,帯広方面から山頂部が目を引く.
今日の登山は,地元に詳しいホストさんのアドバイスで天候を考え予定変更した.お任せである.剣山登山口から一の森を経る剣山往復コース.往復約7km,高低差約920m,コースタイムは上り3時間,下り1時間40分である. 7時にホストさんのお宅出発,天候は曇り,少しパラパラという感じである.8時剣山神社到着,神社に登山の安全とヒグマに遭遇しないよう祈願.入山届を出して登山口を8時15分出発.早速,数日前のクマ出没の注意喚起看板があった.
熊笹の道を進む,少しの急登があったが楽しい登山道である.かなり長い間,道の横に5m間隔位で石仏が並んでいる.途中,下山者から1,000mを超えるあたりから天気が良くなっていると聞きほっとする.
9時40分頃一の森到着,休憩後,二の森10時半頃到着,三の森1,000mに11時過ぎ到着. 休憩後,いよいよ岩登りに挑戦することにする.固定ロープ,ハシゴと続くので一人ずつ慎重に進む.頂上に12時頃到着,頂上の岩場に何本も剣が突き刺さっている不思議な光景.雲海が綺麗で山の間を雲が流れていく.写真撮影後下山,三の森で昼食にする.その後下山,登山口に14時頃到着した.花は今日も少なかったのが残念.
下山中に女性三人組パーテイーのうち一人が行方不明になっていると聞いた.その方は無事発見されたか気になるところである.また,今日も我々の中からダニの犠牲者がでた.いつ噛まれるか分からない. 本日の風呂は十勝幕別天然温泉「華の湯」である.露天風呂他10種類の風呂,サウナを堪能した.夜はホストさん行きつけの池田町のお店の20周年記念パーテイーに参加する事になっていて,池田町町民ホールに向かう.玄関前には今が盛りのヤマボウシ(山法師)の白い花が綺麗でした.
18時開宴で老若男女120名ほど出席とのこと,飲み放題,弁当付き,お土産は地元十勝ワインでした.
お客さんで構成した地元の親父バンドの演奏があり,我々の年代だと親近感を覚える曲目ばかりでした.スナックのパーテイーでこんなに沢山集まり若い人もいてちょっと町をあげての行事かなと思った.私の隣席のおじさんと話が弾んで色々と池田町の歴史等を聞きました.その方は町議会議員を4期務めた方だったのである.池田町は元々国鉄の町で昔は人口1万5千人位で栄えていたが今は6千人になった事,6月25日に日高山脈襟裳十勝国立公園に認定される事,議員報酬まで貴重なお話を聞かせてもらいました.
20時頃にお開きになりお酒を嗜まない参加者の代行運転で無事帰還.帰宅後,鹿肉で小宴会,今日も楽しい一日をすごさせて頂きました. 6月23日: 朝7時に出発し国道273号線で十勝三股の樹海の中を走り,多くの鹿を目撃したり,笹の花が咲いて枯れてしまった所を見つけたりしながら,広い駐車場とトイレのある幌加除雪ステーションに到着です.
そこから三国山登山口に向かって樹海の中を走り,松見大橋を経て北海道で最も標高の高い峠三国峠に9時頃到着しました.
峠のトンネル横にある三国山登山口(1124m)から,沢沿いの荒れた道が続きます.ヒグマに遭遇しないように熊よけ鈴を鳴らし,ホイッスルを吹いて我々の存在をアピールしながら登って行きます.
何度か渡渉を繰り返し水の流れが無くなると,笹が生い茂る急登が始まります.何とか稜線にたどり着くと笹原の踏み分け道になり,しばらく歩いて北海道大分水点(1524m)に10時40分に到着しました.分水点とは,ここからオホーツク海・日本海・太平洋に流れる水が分かれる所です.
三国山(1532m)まであと300m程ですが笹原の薮こぎを強いられるため,三国山のピークは断念し下山する事にしました.
登ってきた道を慎重に下り,三国山登山口に12時に戻ってきました.
三国峠展望台では,北海道の広大な樹海や山々の景色を楽しみました.
後は温泉とジンギスカン鍋が待っています.はやる心を抑えて先ずはタウシュベツ川橋梁の見学です.この橋梁は糠平ダムの完成にともない使われなくなり,ダムの水位の変動により見え隠れするまぼろしの鉄道橋となっています.探勝路にはミズナラの巨木や,旧国鉄士幌線の線路跡があります.北海道開拓の先人達の苦労がよく解る所です.
糠平温泉郷にある糠平館観光ホテルに13時に到着してゆったり温泉を楽しみ,次の目的地である西帯広駅近くの焼肉レストラン有楽町に向かいます.15時15分に有楽町前に到着し,待つこと35分で呼ばれ宴会開始です.早速ホルモンやジンギスカンを大量に注文,酒類も進み最後はうどんで締める至福の時間を過ごしました.後は帰って二次会かな. 山,樹海,鉄道遺産,温泉,食事など北海道満喫で大満足の一日を過ごしました.ありがとうございました. 6月24日: 今日は北海道に来てはや5日目.あいにく天気が悪く,摩周岳登山の予定を釧路湿原散策に変更する.
幕別を6時20分出発.朝が早く朝食を摂らずに出たので,8時半頃釧路駅近辺のすき家で朝食をする事にした.車から降りると気温11℃で肌寒かった.
お腹も満たされ湿原へ向かうが,レンタカーのナビが古いのか? スムースに辿り着かない.10時頃釧路湿原野生生物保護センターに到着.施設を見学した後,近くの釧路湿原展望台に移動する.雨でガスつていて,広大な湿原もよく見えなかった.
さて少し歩こうという事になり,2.5kmの木道を滑らない様に気をつけながら行く.湿原の中を歩いている感じはなく,まるで雑木林の中を通り抜けている感じだった.この周辺にはカヌーツアーやホーストレッキングや,JR釧路線ノロッコ号等色々体験出来る場所があるが,寄らずに帰路につく.
再度釧路駅近くにある和商市場で昼食を摂る事にする.1954年に市民の台所として設立された釧路で最も歴史のある市場で,名物「勝手丼」が有名だ.外人が多かった.
13時30分帯広へ戻る.15時30分,途中,ばんえい帯広競馬場に立ち寄り,ばんえい十勝レースを見る.馬が1トン近い鉄のソリを,2か所の障害を乗り越えて200m競うのである.馬にとっては過酷なレースで,もがき苦しむ様が可哀想だった.1レースが2~3分なので2レースを見て帰る.
この後幕別町にある,3日目に入った華の湯温泉に再度行く.天然かけ流しのモール温泉なので良かった.
最後にイオンで夕食を調達して,最後の晩餐につく.ホストさんのお宅で珍しい肉や山菜,またプレミアム日本酒を頂き話が凄く盛り上がりました.
この度はそれぞれ趣のある山や,旧士幌線のタウシュベツ橋梁や,三国峠,釧路湿原に連れて頂き,皆様には大変お世話になりました.有難うございました. 6月25日: 早いもので今日は帰るのみとなった.
朝4時前には明るくなり,もう一度寝直して5時に起床.既に全員起床済みであった.早々に朝食を済ませ,荷物をまとめて帰り支度にかかる.
5日間お世話になった幕別のホストさんのお宅を6時半に見送りを受けて出発.
帯広から道東自動車道に入り,途中1回トイレ休憩を取り9時前に東千歳インターを降りる.飛行機搭乗までにはまだ時間が有り近くのサーモンパーク千歳に寄りお土産などを物色する.そうこうしている間に10時になりレストランが開き,北海道の食事の締めくくりに札幌ラーメンを食する.
レンタカーを返して新千歳空港から,韓国の会員さんは韓国ソウルへの直行便で,岐阜のご夫妻は中部国際空港へそして京都組は伊丹空港へそれぞれ14時前後の飛行機に搭乗し全員無事帰宅する.
今回は北海道の会員さんに登山ガイドをして頂き,そして泊めていただき大変お世話になりました.ありがとうございました.エゾ鹿肉やギョウジャニンニクなど珍しい食材を賞味させていただき,北海道を満喫しました.本当にありがとうございました.
追伸:18年振りにアポイ岳を登りましたが,以前登った時は多くの高山植物に出会い感激しました.今回は温暖化かオーバーユースか分からないが高山植物が激減していました.そして山もなにか痩せているように感じました.北海道によく行く知人は10年位前から高山植物が減少していくのが目立ち始めたと言っていました.
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