Latest update: August 9, 2019

ドクトル浅野目のネイチャートーク:VOICE 2015 Vol. 120
「天 敵」
 我家のビオトープでは、毎年天敵ショーを見ることができる。金魚やモリアオガエルが産卵するころには、どこからともなくイモリがやってきて、卵を食べはじめる。また、カエルが集まりだした頃、ヘビがやってきてカエルをねらう。時折トンビがヘビを持って帰るといったドラマがみられるのである。ある時テレビをみていると農村の鹿害について若い猟師が「もっと猟師を増やす事と鹿肉料理の流通を促すように」と意見をのべていた。30年ど前に私が森林労働をしていた頃、冬の生活の糧として4年ほど猟師をしたことがある。一回猟をするたびに猟犬の回収に苦労するもので、時には帰ってこない犬もある。その犬たちは自分で猟をしながら山中で生活するのである。私の登山活動の中で、北山や比良山系、鈴鹿山系などで、犬に出会ったことはたびたびあった。しかし今では猟犬にGPSを装着するので犬の回収率は100%となり、鹿の天敵である犬が山中でみかけないのである。そうなると鹿の出生率が上がるのも当然である。「天敵」を広辞苑でしらべると、「自然界である生物の捕食者、寄生者となりそれを殺したり、増加を抑制する他の種の生物。(例)昆虫を捕食する鳥類」とある。又、新国語辞典をみると、1、ある動物を食べる他の動物、2、どうしても合いいれない見るのも嫌いな人間、3、いつもかなわない相手、とある。捕食者の頂点である人間の天敵は2、人間であることがおもしろい。植物を育てている人の天敵利用として、バンカープランツ(天敵を集めるための植物群、すなわちある程度放置された雑草帯)の利用や、庭からでた小石を積み上げてトカゲの住家を提供したり、カマキリの卵嚢を見つけたら庭に置くなど、害虫を捕食してくれる天敵を住まわすことも効果的である。宇宙の神はこの地球に生産者(植物)消費者(動物)分解者(菌類)を授けてくださったのだが、なぜか消費者の一員であるヒトの勢力が突出したため、地球にとっての天敵になりつつある。食物連鎖の頂点に立つ人間は、温暖化や、気象変動まで引き起こし、地球の破壊や消滅にまで及ぶというストーリーは、宇宙の神の考える「自然の流れ」と位置づけているのだろうか。
 今回をもって「ドクトル浅野目のネイチャートーク」を終了します。
 長らく、ありがとうございました。