Latest update: August 9, 2019
ドクトル浅野目のネイチャートーク:VOICE 2016 Vol. 123 「キノコの話」 |
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私が都会でカントリーライフを目指していた頃、勉強のつもりでキノコのおがくす栽培をした事がある。そんな経験や研究のおかげで、美山町に移り住んだ頃には、キノコシーズンが大きな楽しみのひとつになっていた。11月に入ると山々が色付き落葉と共においしいキノコの出現が始まる。
我が家の敷地内ではセンボンイチメガサ、クリタケ、エノキタケが採れ食卓に彩りを添える。中でもエノキタケは、全体にヌメリがあり舌ざわりと歯こたえは最高であり市販のものとは比べものにならないほど美味である。
少し芦生の森に足を踏み入れると、ナメコ、ヌメリスギタケ、マイタケ、ナラタケ等々一級の食菌達が顔を揃えだす。
ネイチャーガイドでキノコを教えるのに重要な事は、キノコは「カビの花」である事と「分解者の王様」である事を強調することにしている。地中に無数なカビが存在する中で短時間ではあるが地上に顔を出して動物や雨風を利用して胞子を分散させるという高等なカビがキノコである。
学者は言う「この地球上のキノコがなくなると地球は3日間で滅びてしまうだろう」。この言葉は生産者である植物、消費者である動物、分解者である微生物及び菌類の3者からひとつでも取り除けは地球が成り立たない事を暗示しているのである。
ネイチャーガイドでもうひとつ大切な事は、地球のマットと言われる「土壌」の説明である。おもむろに森の中の林床に手に入れて。ひとつかみの土を見せながら「この土の中には50億から60億の微生物が住んでいると言われています」。つまり細菌、糸状菌、原生動物、藻類、ウイルス達の生活の場であり、それは地面からわすか30〜40センチぐらいの部分を「土壌」または「地球のマット」と呼ばれている。ずばり地球の生命体はこの部分であるから、人間の都合でモルタルやアスファルトでフタをすることは地球に大いなるインパクトを与えているのである。
最近、美山で見た珍しいキノコ H11年10月 野添にてイカタケ(畑にまいてあったモミガラから大発生していた。)
H12年9月 芦生にてオオミヤマトンビマイタケ(直径40センチの巨大なもの)
![]() (復刻版 VOICE 2001 Vol. 77)
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ドクトル浅野目のネイチャートーク:VOICE 2016 Vol. 122 「鳥の巣」 |
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昨年、我が家の軒先にキセキレイが巣を作り2羽のヒナと共に無事、巣立っていった。巣作りから育児の間、ほほえましい生活ぶりをじっくり見せてもらった。その記念にその巣を標本箱に収めることにしだ。
最近の鳥は新素材を多用しており、農業用ビニールや釣り糸から針金等を巧みに利用している。これが人間の生活が自然素材から還のくにつれ動物や小鳥たちの生活様式も変わってきたことがうかがえる。しかし、そんな巣でも肝心な部分、特に産卵揚所においては保温性を高めるための獣毛が敷かれ、また殺菌消毒のためにフィトンチッドの多い針葉樹の葉を置き、さらにはヒナを乾燥から守るためにコケ類等も運び入れる等、自然の患みをしっかり利用している。
本釆、鳥の巣は住むためのものではなく産院と育児所を合わせた神聖な揚所である。したがって巣の中は大変清潔で糞ひとつ落ちていない。そのことは清潔を保つということ以外に天敵から身を守るため、ヒナの糞尿はゼリー状の物体に包まれて半固体化したものでそれを親が食べてしまうか巣から離れた場所に捨てに行くという仕組みになっているからである。しかし鳥の種類によっては巣の外へお尻を突き出して下へ落とすもの もいる。それは人家の近くで巣を作るツバメや鳥の王様とも呼ばれるワジ・タカ類や天敵に対して反撃できる種類の鳥である。
鳥の巣にはオープンフロント式とホールフロント式がある。前者は皿状またはおわん型が主流でワシ・タカ類や海烏等比較的大型のものや小型でも攻撃的な種類が多い。その他の鳥達はもっばらホールフロント式で木の穴や、石垣の穴あるいは泥で作った穴を利用する。一般的に鳥の巣作りといえばホールフロント式がほとんとである。
もし、君が庭の木に巣箱を取り付けようと思うならとんな鳥に利用してもらいたいかが問題である。シジュウガラ、ヤマガラ、コジコウガラ等、スズメサイズの小鳥の場合なら穴のサイズは25ミリから30ミリ以内にしなければ天敵から身を守れない。まだ、穴の近くの止まり木も天敵に利用されるので取り付けてはならない。さらに巣箱の底から穴まで13センチ以上の深さが必要である。そして、次の年も利用してもらうためには古くなった巣材を取り除くための扉も必要になってくる。これらの諸条件が整わないと鳥は利用してはくれない。
今年、我が家では6か所に巣箱を取り付けたが樹木の種類、巣箱の方角、高さ等を変えて観察することにした。今からわくわくするほと楽しみである。
繁殖期に入るとオス鳥は物件を調査しにやってくる。巣の回りを伺度も訪れ、安全で快適かを見極める。しばらくするとメスを連れてやって来て一生懸命に物件の説明に入る。穴の中から顔を出して見せたり、出入りの快適さをアピールする様子はなんともほほえましい。
(復刻版 VOICE 2003 Vol. 79)
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